近江史を歩く

07.羽衣伝説と菅原道真(菅山寺)




 余呉駅近くの大木。衣掛柳と呼ばれている。羽衣伝説で天女が羽衣を掛けた柳である。菅原道真と余呉湖の羽衣伝説に、何の関係があるのか。まず、羽衣伝説から。
 桐畑太夫という漁師が、余呉湖で水浴びをしている天女の羽衣を隠してしまう。困り果てた天女は、天に帰ることを諦めて太夫の妻になり、やがて一人の男の子を産む。しかし、羽衣をみつけた天女はそれを纏い天に帰ってしまう。残された幼子を憐れんだ菅山寺の僧・尊元阿闍梨は、この子を寺に連れ帰って養育した。この子がのちに菅原是善卿の養子となる。すなわち菅原道真である。



 羽衣伝説は各地に存在する伝説である。日本で最古の羽衣伝説とされるものが、滋賀県長浜市の余呉湖を舞台としたものである。天女はしばしば白鳥と同一視され、白鳥伝説につながっていく。白鳥伝説は、ユーラシア大陸を伝搬したようで、鉄との関連を指摘する説もある。
 菅原道真誕生については諸説あるが、羽衣伝説では天女の子で菅山寺で育つことになる。その後、道真は出世を遂げるが讒言にあい、太宰府に左遷され不遇のうちに死んでいく。怨霊となった菅原道真は結構やっかいで、神様にしてしまうことでマイナスのパワーをプラスに転化させようとする。学問の神様、天神様の誕生である。




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